Monday, October 8, 2012

GBM (Japanese 日本語)




膠芽腫とは何ですか?
膠芽腫もしくは多形性膠芽腫(たけいせいこうがしゅ、グリオブラストーマ)は最も多い脳腫瘍のひとつで、脳腫瘍の約12%から15%を占めます。膠芽腫もしくは多形性膠芽腫はGBMと略して呼ばれることもあります。最も多い脳の悪性腫瘍ではありますが、大腸がんや肺がんに比べれば比較的稀な腫瘍です。腫瘍細胞はアストロサイト(星状膠細胞、せいじょうこうさいぼう)-神経膠細胞のひとつで神経細胞を保持し、神経に栄養を与えたり、脳組織の損傷に対する防御反応を担っている―に類似しています。膠芽腫の発生と悪性化には幹細胞もしくは未成熟アストロサイトの遺伝子異常が関与していると考えられています。こういった遺伝子の異常をもった細胞群は増殖が早く、周囲の脳組織の中に浸み込むように拡がります。



GBMはWHO(World Health Organization、世界保健機関)分類で、どのグレード(悪性度)ですか ?
WHO分類では脳腫瘍をグレードIからグレードIVに分類しています。グレードIはもっとも悪性度が低く、グレードIVは悪性度が最も高い腫瘍です。グレードIVの腫瘍細胞は、増殖力が強いため、進行がとても早く、症状がどんどん悪くなることがあります。WHOはGBMをグレードIVに分類しています。



GBMの危険因子にはどういったものがありますか?
膠芽腫の危険因子については未だよく分かっていません。しかし男性における膠芽腫の罹患率は女性に比べて高く、男女比は約1.6:1と報告されています。発症のピークは50-84歳の成人で、小児の膠芽腫は膠芽腫全体の10%未満です。GBMの発症率には人種差が認められており、非ヒスパニック系白人に多く認められます。次に罹患率が高いのがヒスパニック系です。反対に非ヒスパニック系黒人やアジア/太平洋諸島に住む人々では、この脳腫瘍の発症率が少ないことが報告されています。そのほか持続的な電離放射線、化学物質、ポリ塩化ビニルなどへの暴露がGBM発症率を高める可能性が報告されています。食生活や喫煙、携帯電話の使用とGBM発症との関連は明らかにはされていません。多くのGBMの患者さまには家族歴がなく(散発性腫瘍といいます)、親から受け継いだ持って生まれた遺伝子の異常がGBM発症の原因ではないと考えられています。GBMの患者さまの子どもたちで、GBMを発症する可能性が高くなるとは考えられていません。しかし、稀に家族性のGBMも報告されており、これら家族性GBMでは、子孫がGBMの遺伝子異常をもっている可能性があります。



GBMの症状にはどういったものがありますか?
GBMの症状は、腫瘍の大きさ、腫瘍の位置、腫瘍の増殖速度に応じて異なります。GBMの症状には頭痛、吐き気・嘔吐、錯乱、脱力感、しびれ、めまい、発作、平衡感覚障害などがあります。これらの症状がありましたら、早めに医師の診察を受けてください。しかし、これらの症状は脳腫瘍以外にも、ほかの様々な疾患や原因で起こりえます。



脳血管造影(アンジオグラム)・脳波検査(EEG)とはどういった検査ですか?
脳腫瘍の検査には脳血管造影、頭部の血管を写し出す検査、があります。脳血管造影を行うことにより、脳腫瘍と脳内の重要な血管との位置関係などが詳細に分かります。これは脳外科医が手術を行う際に重要な情報となります。脳波検査(EEG)とは脳の微小な活性電位を体表電極で記録する検査です。脳波検査により異常脳波の有無を調べ、けいれん発作等の原因を調べます。



検査(MRIなど)で脳腫瘍かもしれないと言われました。何科にかかればよいでしょうか?
脳腫瘍の経験の豊富な医師をお勧めします。例えば神経腫瘍内科医、腫瘍内科医、脳神経外科医などです。あなたの主治医に相談してみてください。主治医の先生が専門家を紹介してくれるでしょう。多くの脳腫瘍専門病院では、脳神経外科医、神経腫瘍内科医、神経放射線科医、神経病理医などが緊密な協力体制のもとにひとつのチームとして脳腫瘍の診断や治療に関わっています。



なぜ手術による腫瘍の摘出が必要なのですか?
執刀医は手術により、可能な限り脳機能を温存しつつ、できるだけ多くの腫瘍を取り除こうとします。多くの症例で、手術による予後の改善が期待できます。最も一般的な手術法は開頭術です。これは頭皮に小さな切開を加え、そこから頭蓋骨の一部を外し、そこから脳腫瘍を直接取り除く方法です。手術では執刀医はできるだけ多くの腫瘍摘出を目指します。腫瘍の摘出が終わったら、頭皮の切開はステープルまたは直接縫合で閉じられます。手術後は集中治療室(ICU)に入室します。



手術中に、生検や腫瘍の切除を行う予定であると聞きました。具体的にはどのような検査ですか?
生検とは腫瘍の種類を診断するために重要な病理検査、遺伝子解析等を行うために、腫瘍の一部を採取することです。これらの検査は、各々の検査に精通した専門病理医によって行われます。こうやって得られた検査結果をもとにして、脳神経外科医や腫瘍内科医は手術後に追加すべき治療の有無や種類等を判断します。病理診断の結果によっては腫瘍の追加切除が必要になる場合もあります。腫瘍の切除とは、手術により可能な限り多くの腫瘍を摘出し取り除くことを指します。


手術で摘出した腫瘍はその後どうするのですか?
通常、手術で摘出した腫瘍は、腫瘍診断のため包埋等の工程を経てブロックにして標本を作製し保存しています。手術の際に、病理診断に必要と思われる量の腫瘍組織が十分採取できたときは、さらに腫瘍の一部を液体窒素または特殊な冷凍庫で凍結し、保存しています。治験や臨床試験に参加するときに、この凍結された腫瘍が必要になることがあります。その際には凍結保存された腫瘍を200-400 mg(0.5立方センチメートルまたは豆粒大)提出します。もしも臨床試験・治験に興味がおありでしたら、前もって(手術日までに余裕を持って)その旨を主治医にお伝えください。手術前に脳神経外科医や治験スタッフの調整などを進めることができることがあります。



GBMの治療にはどのようなものがありますか?
近年の治療法の進歩はめざましく、悪性度の非常に高い脳腫瘍であるとされる膠芽腫に対しても新しい治療が開発されてきています。膠芽腫に対する標準的な治療は、手術による腫瘍摘出と、手術後の放射線療法や化学療法を組み合わせた治療です。全身状態(や副作用の程度)によっては放射線療法や化学療法が施行できない場合もあります、このような標準的な治療のほか、全国で自家腫瘍ワクチン療法や分子標的療法などといった治験が行われています。神経腫瘍内科医にお尋ねいただければ、こういった治験に関する情報をご提供できます。またwww.ClinicalTrials.govのホームページでは、あなたのお住まいの地域でどのような膠芽腫の治験が行われているかといった情報が提供されています。



放射線治療について知っておくべきことはありますか?
通常開頭手術で腫瘍を切除した後、切除した周辺の脳組織に放射線照射を行います。高エネルギーのX線(電離放射線)を照射するので、腫瘍細胞の分裂を阻止することが目的です。放射線治療により腫瘍細胞のDNAに損傷を与えることで、残存している腫瘍細胞の成長を抑えます。



放射線治療にもいくつか種類があると聞いたのですが?
一般的な放射線治療は体の外から脳内の腫瘍に放射線を照射して治療する方法です。通常約30回の放射線治療が6週間にわたって行われます。標準的な1回の放射線量は1.8〜2.0 Gyで、最終的な被爆量は合計50〜60 Gyになります。実際の放射線量は腫瘍からの距離、解剖学的部位により異なっており、患者さまごとに異なります。たとえば高齢の患者さまには、通常の放射線療法だと副作用が強すぎる場合があります。定位放射線治療(SRS)も症例によっては選択されることがあります。 SRSでは1回の照射で放射線を集中的に腫瘍に照射し、腫瘍細胞を死滅させることを目的としています。



放射線治療の副作用にはどんなものがありますか?
急性期の副作用には食欲不振、疲労感と吐き気などがあります。そのほかに短期記憶喪失、皮膚の炎症、脱毛などもおこることがあります。晩期障害には協調障害、論理的思考や思考の障害などが報告されています。電離放射線の被曝とGBM発癌との関連が報告されており、腫瘍の晩期再発がおこる可能性も否定できません。



化学療法とは何ですか?
手術による腫瘍摘出、追加放射線治療に加えて、神経腫瘍内科医のもと化学療法を行うことがあります。化学療法とは薬の作用によってがん細胞の成長を抑制またはがん細胞を死滅させる治療法です。化学療法は使用される薬の種類によって異なりますが、通常は治療を何コースか繰り返します。内服もしくは点滴により治療を行います。最も一般的な化学療法薬はテモゾロマイド(テモダール)、ロムスチン(CCNU)、およびカルムスチン(BCNU)です。



私は臨床試験に参加するべきですか?
ここで重要なことは、一般的な治療法はすでに治療による効果が確認されているということです。GBMの患者さまの多くは最終的に治験に参加されることが多いですが、治験では治療効果を認めるかもしれませんし、治療効果が認められないかもしれないことをご了承ください。しかし、治療効果の有無に関わらず、治験により非常に貴重な情報が得られることは事実です。これらの治験の結果により将来多くの患者さまが救われるかもしれません。標準的な治療法を選択した後で、治療効果が認められなければそこで治験に参加することも可能です。治験に参加するか否かは主治医とご家族とよく相談して決めてください。主治医や腫瘍内科医、支援団体の仲間が治験とは何か、あなたが治験に参加すべきか否か、相談にのってくれるでしょう。



治療が終わったあとはどうするのですか?
治療終了後は、医師による診察(神経学的検査)、MRIやCT検査などの画像検査により腫瘍の再発の有無を確認します。



主治医の先生は見つかりました。もっと多くの情報やサポートがほしいのですが、どこで得ることができますか?
National Brain Tumor Society(全国脳腫瘍学会)は様々な情報やリソースを提供しています。ホームページはwww.braintumor.org/です。脳腫瘍支援団体へのリンクはwww.braintumor.org/patients-family-friends/find-support/です。支援団体は脳腫瘍患者とその家族、友人、そして時には医療従事者も含め構成されています。多くの支援団体では、定期的な会合があり、そこではあなたの病気について理解しようとしてくれます。支援団体では、仲間と同じ体験を共有することで、精神的かつ実質的なサポートが得られます。大病院の脳腫瘍プログラムにはその病院独自の支援団体があることもあります。また脳腫瘍学会のホームページ(www.braintumor.org/patients-family-friends/about-brain-tumors/publications/essentialguide.pdf )では" The Essential Guide to Brain Tumors (脳腫瘍の理解のために不可欠な小冊子)"という優れた小冊子を無料でダウンロードすることができます。Musella Foundation for Brain Tumor Research and Information Inc.(脳腫瘍の研究と情報の為のムセラ財団株式会社)のホームページ(http://www.virtualtrials.com/faq/PatientGuide2010.pdf)では "“Brain Tumor Guide for the Newly Diagnosed(はじめて脳腫瘍と診断された方のためへの小冊子)"というPDF小冊子がダウンロード可能です。Pediatric Brain Tumor Foundation(小児脳腫瘍財団)はhttp://www.pbtfus.org/about/で脳腫瘍に苦しむ子どもを持つ家族のための情報を提供しています。



私は家庭医または医療従事者です。より詳しい情報が必要な場合は、どうすればいいですか?
同じ医療機関の腫瘍内科医に聞いてみてください。さらなる詳しい情報については近隣もしくは遠方の中核病院の神経腫瘍内科医が相談にのってくれるでしょう。多くの病院では、ホームページのBrain Tumor Program(脳腫瘍プログラム)もしくはNeuro-oncology(神経腫瘍内科)のページに、神経腫瘍内科医についての情報を掲載しています。上記の脳腫瘍に関連した小冊子も参考にしてください。またCentral Brain Tumor Registry of the United States(アメリカ中央脳腫瘍登録簿)では様々な種類の脳腫瘍に関する詳細な統計情報が、予後の情報も含めて年齢や民族別に提供されています。



マイノリティや十分な医療サービスを受けられていない患者さまのために、医療従事者として患者教育用の教材を探しています - どこで手に入れることができますか?
Intercultural Cancer Council (ICC) (異文化間がん評議会)はアフリカ系アメリカ人、ラテン系、ハワイ/太平洋諸島系、アメリカ先住民を含むマイノリティに関連したがんの情報を、医療従事者の皆様に提供しています。 ホームページwww.iccnetwork.orgをご覧ください。

Redes En Acción: The National Latino Cancer Research Network(国立ラテンがん研究ネットワーク)はNational Cancer Institute(国立がん研究所)が財政支援を行っているラテン系がん患者の闘病の為のイニシアチブです。医療従事者へのトレーニングと情報が提供されています。 www.redesenaccion.orgをご覧ください。



注意:
このブログで提供されている情報は教育を目的としています。個人的な医療状況に関する具体的な指導はあなたのお住まいの地域で医師に診察してもらってください。












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